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おほかたは月をもめでじこれぞこの
積もれば人の老いとなるもの

歌の意味
たいていのことでは月さえも愛でまい。これこそが、積もり重なれば人の老いとなるものなのだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 879

詞書「題しらず」
 月を愛でることを控えようと詠む歌である。月を眺めて過ごす月日が積もれば年となり、人の老いとなるという理屈で、月を愛する心と老いを恐れる心とを重ねている。
 作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の子で、六歌仙の一人である。
 この歌は『伊勢物語』第八十八段にも見え、若くない友人たちが集まって月を見た折の歌とされる。月の一連から老いの一連へと移る橋渡しの位置にある。

 初句「おほかたは」は、たいていのことでは、ふつうはの意である。
 二句「月をもめでじ」は、打消意志の「じ」で、月さえ愛でまいと決意を示す。ここで意味が切れる二句切れである。
 三句「これぞこの」は、月を指して「これこそが」と強調する。「ぞ」は結句の「もの」にかかる。
 四句「積もれば人の」は、月が重なって年月となることをいう。月と月日の「月」が重ねられている。
 結句「老いとなるもの」は体言止めで、月を見ることが老いにつながるという結論を示す。本巻で本歌の後に続く月の歌と、第八百八十九首から始まる老いの歌とをつなぐ語である。

めづ:愛する、賞美する
作者
在原業平
出典
古今和歌集
前の歌
我が心慰めかねつ更級や をばすて山に照る月を見て
次の歌
かつ見れど疎くもあるかな月影の 至らぬ里もあらじと思へば