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取りとむるものにしあらねば年月を
あはれあな憂と過ぐしつるかな

歌の意味
つかまえて引き留められるものではないので、年月を「ああ、なんとつらい」と嘆きながら過ごしてしまったことだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 897

詞書「題しらず」
 年月はつかまえて留められるものではないので、ただ嘆きながら過ごしてきたと詠む歌である。どうにもならない時の流れを前にした無力感と、嘆くほかなかった日々への悔いがにじむ。作者は未詳である。

 初句「取りとむる」は、つかまえて引き留めるの意である。前歌の第八百九十六首の「取りもあへず」を受けて、時をとどめられない嘆きが続く。
 二句「ものにしあらねば」の「し」は強意の副助詞で、そういうものではないのでの意となる。
 三句「年月を」は、過ごしてきた長い時間を指す。
 四句「あはれあな憂と」は、感動詞「あはれ」「あな」を重ね、嘆きの声をそのまま歌に取り込んでいる。
 結句「過ぐしつるかな」は、完了の「つ」の連体形に詠嘆の「かな」が付き、過ごしてしまったことだと結ぶ。

とりとむ:つかまえて引き留める
すぐす:時を過ごす
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
さかさまに年もゆかなむ取りもあへず 過ぐる齢やともに帰ると
次の歌
とどめあへずむべもとしとは言はれけり しかもつれなく過ぐる齢か