老いぬればさらぬ別れもありと言へば
いよいよ見まくほしき君かな
- 歌の意味
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年老いると避けられない別れもあるというので、ますます会いたく思われるあなたですよ。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌上 900
詞書「業平朝臣の母の皇女長岡に住み侍りける時に、業平宮仕へすとて時々もえまかりとぶらはず侍りければ、師走ばかりに母の皇女のもとより、とみの事とて文を持てまうで来たり、開けて見れば、言葉はなくてありける歌」
業平の母が長岡に住んでいた頃、業平は宮仕えに忙しく、たまにも訪ねて行けなかった。十二月頃、母から急用だといって手紙が届き、開けてみると、言葉はなくこの歌だけが書かれていたという。老いれば避けられない死別もあるので、ますますあなたに会いたいと、わが子への切ない思いを詠んでいる。
作者の「業平朝臣のははのみこ」は伊都内親王である。桓武天皇の皇女で、阿保親王の妃となり、在原業平を生んだ。
この歌と次歌の業平の返歌は『伊勢物語』第八十四段にも見え、母子の情愛を伝える贈答として名高い。
初句「老いぬれば」は、完了の「ぬ」の已然形に「ば」が付き、年老いてしまうとの意となる。本巻の第九百三首の初句「老いぬとて」とも、老いを起点とする点で響き合う。
二句「さらぬ別れも」は、避けられない別れ、すなわち死別をいう。次歌の第九百一首も同じ「さらぬ別れ」を用いて答えている。
三句「ありと言へば」は、世に言われていることを根拠として示す。
四句「いよいよ見まく」の「まく」は推量の「む」のク語法で、会いたいことの意となる。
結句「ほしき君かな」は、詠嘆の「かな」で、わが子への思いをしみじみと結ぶ。
さらぬわかれ:避けられない別れ、死別
みまくほし:会いたい、見たい
とみ:急なこと、急用
しはす:陰暦十二月
- 作者
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伊都内親王
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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鏡山いざ立ち寄りて見てゆかむ 年経ぬる身は老いやしぬると
- 次の歌
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世の中にさらぬ別れのなくもがな 千代もと嘆く人の子のため