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世の中にさらぬ別れのなくもがな
千代もと嘆く人の子のため

歌の意味
この世に避けられない別れなどなければよいのに。親に千年も生きてほしいと嘆き願う、子どものために。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 901

詞書「返し」
 前歌の母からの歌に対する業平の返歌である。避けられない別れがこの世になければよいのにと願い、親の長寿を千年もと願う子の心を詠んで、母への深い思いを伝えている。
 作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の子で、六歌仙の一人である。
 この贈答は『伊勢物語』第八十四段にも見える。

 初句「世の中に」は、この世全体に願いを向ける広い言い方である。
 二句「さらぬ別れの」は、前歌の第九百首の「さらぬ別れ」をそのまま受けて答える。
 三句「なくもがな」の「もがな」は願望の終助詞で、なければよいのにの意となる。ここで意味が切れる三句切れである。
 四句「千代もと嘆く」は、親に千年も生きてほしいと嘆き願うことをいう。
 結句「人の子のため」は体言止めで、世の中のすべての子のためと一般化しつつ、自分自身の思いを込めている。

さらぬわかれ:避けられない別れ、死別
ちよ:千年、長い年月
作者
在原業平
出典
古今和歌集
前の歌
老いぬればさらぬ別れもありと言へば いよいよ見まくほしき君かな
次の歌
白雪の八重降りしけるかへる山 かへるがへるも老いにけるかな