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ちはやぶる宇治の橋守なれをしぞ
あはれとは思ふ年の経ぬれば

歌の意味
宇治橋の橋守よ、お前のことこそしみじみといとしく思う。お前も私も、ともに長い年月を経てきたのだから。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 904

詞書「題しらず」
 宇治橋を長年守ってきた橋守に呼びかけ、同じく年を重ねた者としていとしく思うと詠む歌である。年老いた自分と橋守を重ね合わせ、長い歳月を経てきた者どうしの共感を表している。作者は未詳である。
 本巻では本歌から第九百九首まで、橋守や松など、長い年月を経たものを詠む歌が続く。

 初句「ちはやぶる」は、「宇治」にかかる枕詞である。
 二句「宇治の橋守」は、山城国の宇治川に架かる宇治橋の番人で、呼びかけの形をとる。
 三句「なれをしぞ」の「なれ」は、お前の意の代名詞で、強意の「し」と係助詞「ぞ」を重ねて強く取り立てる。
 四句「あはれとは思ふ」は、「ぞ」を受けて連体形「思ふ」で結ぶ係り結びで、八音の字余りである。
 結句「年の経ぬれば」は、理由を倒置で示し、互いに年を重ねたことへの共感で結ぶ。

はしもり:橋の番人
なれ:お前、あなた
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
老いぬとてなどか我が身を責めきけむ 老いずは今日に会はましものか
次の歌
我見ても久しくなりぬ住の江の 岸の姫松いく世経ぬらむ