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あづさ弓磯辺の小松誰が世にか
万代かねて種をまきけむ

歌の意味
磯辺の小松は、いったい誰の時代に、万代の先を見越して種をまいたのだろうか。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 907

詞書「題しらず」
 磯辺に生える小松を見て、いったい誰がいつの世に、万代の後までを見越してその種をまいたのだろうと思いやる歌である。松の長寿を讃えつつ、はるかな昔の人の営みに思いをはせている。
 作者はよみ人しらずとされるが、左注に「この歌は、ある人のいはく、柿本人麿かなり」とあり、一説に柿本人麻呂の作とする。人麻呂は飛鳥時代の宮廷歌人で、歌聖と称される。

 初句「あづさ弓」は、弓を射る意から「い」の音を導き、「磯辺」にかかる枕詞である。
 二句「磯辺の小松」は、海辺に生える小さな松である。前の二首の「姫松」を受けて、松を詠む歌が続く。
 三句「誰が世にか」は、疑問の「か」で、結句の「けむ」と係り結びをなす。
 四句「万代かねて」の「かねて」は、前もって見越しての意で、万代先の繁栄を予想していたことをいう。
 結句「種をまきけむ」は、過去推量の「けむ」の連体形で結ぶ係り結びである。

かぬ:前もって見越す、予定する
よろづよ:限りなく長い年月、万代
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
住吉の岸の姫松人ならば いく世か経しと問はましものを
次の歌
かくしつつ世をや尽くさむ高砂の 尾上に立てる松ならなくに