古典和歌stream

わたの原寄せ来る波のしばしばも
見まくのほしき玉津島かも

歌の意味
大海原から寄せてくる波がたびたび寄せるように、しばしば見たいと思う玉津島であることよ。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 912

詞書「題しらず」
 大海原から絶え間なく寄せる波を序として、何度でも見たいと思う玉津島の美しさを讃える歌である。繰り返し寄せる波の動きが、繰り返し訪れたい心と重なっている。作者は未詳である。
 玉津島は紀伊国和歌の浦にある島で、玉津島神社は和歌の神として後世信仰を集めた。

 初句「わたの原」は、広々とした海、大海原のことである。前の二首の「わたつみ」に続き、海を詠む歌が並ぶ。
 二句「寄せ来る波の」は、絶えず寄せてくる波で、上二句が三句の「しばしば」を導く序詞となる。
 三句「しばしばも」は、たびたびの意で、波が何度も寄せる様子と、何度も見たい心とを重ねる。
 四句「見まくのほしき」の「まく」は推量の「む」のク語法で、見たいと思うの意となる。
 結句「玉津島かも」は、詠嘆の終助詞「かも」で結び、景勝地への讃嘆を示す。

わたのはら:広々とした海、大海原
たまつしま:紀伊国和歌の浦にある島、玉津島
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
わたつみのかざしに挿せる白妙の 波もて結へる淡路島山
次の歌
難波潟潮満ち来らし海人衣 たみのの島に鶴鳴き渡る