古典和歌stream

沖つ波たかしの浜の浜松の
名にこそ君を待ちわたりつれ

歌の意味
沖の波が高いという、高師の浜の浜松の名のとおりに、私はずっとあなたを待ち続けていたのだ。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 915

詞書「返し」
 前歌の藤原忠房の歌に対する貫之の返歌である。高師の浜の浜松の「松」という名のように、自分こそずっとあなたを待っていたのだと答え、訪問を喜ぶ気持ちを伝えている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、『古今和歌集』の撰者の中心となり、仮名序を著した。三十六歌仙の一人である。

 初句「沖つ波」は、沖の波の意で、波が「高し」の意を導く。前歌の「おきつの浜」の「おきつ」を受けて答えている。
 二句「たかしの浜の」の「たかし」は、波が「高し」と、和泉国の地名である「高師」を掛けた掛詞である。
 三句「浜松の」は、高師の浜に生える松で、「松」の名が「待つ」を導く。
 四句「名にこそ君を」の「こそ」は、結句の「つれ」と係り結びをなす。松の名に違わずの意である。
 結句「待ちわたりつれ」は、完了の「つ」の已然形で結び、ずっと待ち続けていたの意となる。前歌の「尋ね来れば」に対し、待つ側の思いで応じる、待つ者と訪ねる者の対をなす。

たかし:波が高い意と、和泉国の地名である高師を掛ける
まちわたる:ずっと待ち続ける
作者
紀貫之
出典
古今和歌集
前の歌
君を思ひおきつの浜に鳴く鶴の 尋ね来ればぞありとだに聞く
次の歌
難波潟生ふる玉藻をかりそめの 海人とぞ我はなりぬべらなる