雨によりたみのの島を今日行けど
なには隠れぬものにぞありける
- 歌の意味
-
雨に降られたので、蓑という名をもつ田蓑の島を今日通って行くけれど、名前だけでは雨から身を隠せないものであったよ。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌上 918
詞書「難波へまかりける時、田蓑の島にて雨にあひて詠める」
難波へ行く途中、田蓑の島で雨にあって詠んだ歌である。雨具の蓑と同じ名をもつ島なのに、名前だけでは雨をしのげないと、地名を生かしたおどけた機知の歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、『古今和歌集』の撰者の中心となり、仮名序を著した。三十六歌仙の一人である。
初句「雨により」は、雨にあったのでの意で、状況を示す。
二句「たみのの島を」は、地名の「田蓑の島」と、雨具の「蓑」を掛けた掛詞である。本巻の第九百十三首も田蓑の島を詠んでいる。
三句「今日行けど」は、逆接の「ど」で、今日通って行くけれどの意となる。
四句「なには隠れぬ」の「なには」は、「名には」と地名の「難波」を掛けた掛詞である。蓑という名だけでは雨に隠れられないの意となる。
結句「ものにぞありける」は、「ぞ」を受けて「ける」で結ぶ係り結びで、今気づいた驚きを示す。
たみの:難波の地名である田蓑の意と、雨具の蓑を掛ける
なには:名にはの意と、地名の難波を掛ける
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
すみよしと海人は告ぐとも長居すな 人忘れ草生ふといふなり
- 次の歌
-
あしたづの立てる川辺を吹く風に 寄せて返らぬ波かとぞ見る