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都まで響き通へるからことは
波の緒すげてぞ弾きける

歌の意味
都まで響きが届いている唐琴は、波を琴の糸として張り、それで弾いているのであった。
鑑賞
巻第十七 雑歌上 921

詞書「唐琴といふ所にて詠める」
 唐琴という名の土地で、その名にちなんで詠んだ歌である。都にまで名が響く唐琴の浦は、打ち寄せる波を琴の糸として張り、奏でているのだと、地名を楽器の唐琴に見立てている。
 作者の「真せいほうし」は、伝の詳らかでない僧である。
 なお本文の結句は「そひきける」とあり、読み仮名の行の「かせそひきける」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。通行の本文では結句を「風ぞ弾きける」とし、波の糸を風が弾くと解する。

 初句「都まで」は、唐琴の評判が遠く都まで届いていることを示す。
 二句「響き通へる」は、琴の音が響き渡ることと、名声が伝わることを重ねている。
 三句「からことは」は、地名の「唐琴」と、楽器の「唐琴」を掛けた掛詞である。本巻では次歌の第九百二十二首から第九百三十首まで、滝を詠む歌が続く。
 四句「波の緒すげて」は、波を琴の弦として張っての意である。「緒」は琴の糸、「すぐ」は糸を通して張る意である。
 結句「ぞ弾きける」は、「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びで、そうして弾いていたのだの意となる。「響き」「緒」「弾き」は「琴」の縁語である。

からこと:地名の唐琴の意と、楽器の唐琴を掛ける
すぐ:糸や緒を通して張る
を:琴の弦、緒
作者
真静法師
出典
古今和歌集
前の歌
水の上に浮かべる舟の君ならば ここぞとまりと言はましものを
次の歌
こき散らす滝の白玉拾ひおきて 世の憂き時の涙にぞ借る