こき散らす滝の白玉拾ひおきて
世の憂き時の涙にぞ借る
- 歌の意味
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しごいてまき散らしたような滝の白玉を拾っておいて、世の中がつらい時の涙として借りることにしよう。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌上 922
詞書「布引の滝にて詠める」
摂津国の布引の滝で詠んだ歌である。滝のしぶきを、糸からしごき落として散らした白玉に見立て、それを拾っておいて、世の中がつらい時に流す涙として借りようと詠む。美しい見立ての中に、憂き世を生きる嘆きがにじむ。
作者の「在原行平朝臣」は、阿保親王の子で、在原業平の異母兄にあたる人物である。中納言に至り、須磨に蟄居したことでも知られる。
この歌は『伊勢物語』第八十七段にも見え、布引の滝で兄弟が歌を詠み合う場面に置かれている。
なお本文の二句は「たきの白玉」とあり、読み仮名の行の「たきのしらいと」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「こき散らす」は、糸に通した玉をしごいて散らすの意で、激しく飛び散る滝のしぶきを表す。
二句「滝の白玉」は、しぶきを白い玉に見立てた言い方である。次歌の第九百二十三首の「白玉」と同じ語で、二首が並ぶ。
三句「拾ひおきて」は、拾って取っておいての意で、六音の字余りである。
四句「世の憂き時の」は、世の中がつらく思われる時をいう。
結句「涙にぞ借る」は、「ぞ」を受けて連体形「借る」で結ぶ係り結びで、白玉を涙として借りようの意となる。玉と涙を重ねる見立てである。
こきちらす:しごいてまき散らす
しらたま:白い玉、真珠
- 作者
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在原行平
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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都まで響き通へるからことは 波の緒すげてぞ弾きける
- 次の歌
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抜き乱る人こそあるらし白玉の 間なくも散るか袖の狭きに