裁ち縫はぬ衣着し人もなきものを
なに山姫の布さらすらむ
- 歌の意味
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裁ちも縫いもしない衣を着ていた仙人も、今はもういないのに、どうして山の女神はこうして布をさらしているのだろう。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌上 926
詞書「竜門に詣でて滝のもとにて詠める」
大和国の竜門寺に参詣し、滝のもとで詠んだ歌である。竜門には仙人が住んだという伝説があり、仙人の着る縫い目のない衣を思い起こしつつ、その仙人ももういないのに、なぜ山の女神は滝という布をさらしているのかと詠む。滝を布に見立て、伝説の地の神秘的な趣を表している。
作者の「伊勢」は、藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕えた女房である。三十六歌仙の一人である。
初句「裁ち縫はぬ」は、裁つことも縫うこともしないの意で、縫い目のない仙人の衣を指す。
二句「衣着し人も」は、過去の「き」の連体形「し」を用い、その衣を着ていた仙人を指す。
三句「なきものを」は、逆接の「ものを」で、もういないのにの意となる。
四句「なに山姫の」の「なに」は、どうしての意で、結句の「らむ」と呼応する。「山姫」は山を守る女神である。
結句「布さらすらむ」は、現在推量の「らむ」で、どうして布をさらしているのだろうと推し量る。本巻の第九百二十四首と同じく、滝を布に見立てている。
やまひめ:山を守る女神、山姫
さらす:布を日に当てて白くする
りゆうもん:大和国の竜門寺、仙人伝説の地
- 作者
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伊勢
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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清滝の瀬々の白糸繰りためて 山分け衣織りて着ましを
- 次の歌
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主なくてさらせる布を七夕に 我が心とや今日は貸さまし