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都人いかがと問はば山高み
晴れぬ雲居にわぶと答へよ

歌の意味
都の人が私の様子をどうしているかと尋ねたら、山が高いので晴れることのない雲の中で、わびしく暮らしていると答えてくれ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 937

詞書「甲斐守に侍りける時、京へまかり上りける人につかはしける」
 甲斐守として任国にあった作者が、都へ上る人に託した歌である。都の知人から様子を問われたときの答え方を指定する形で、山深い任国での晴れない暮らしと心とを伝えている。
 「晴れぬ雲居」は山国甲斐の実景であるとともに、晴れない心のたとえでもある。本巻の第九百六十二首の在原行平の歌も「わぶと答へよ」の結句を持ち、都を離れた者が都人への答えを託す同じ構図をとっている。
 作者の「をののさたき」は小野貞樹である。平安時代前期の官人で、詞書によれば甲斐守を務めた。小野小町と歌を交わしたことが古今和歌集に見える。

 初句「都人」は、都に住む人。遠い任国から都の知人を思っている。
 二句「いかがと問はば」は、どうしているかと尋ねたならば、の意。「問はば」は仮定条件である。
 三句「山高み」は、山が高いので、の意。「名詞に形容詞の語幹と接尾語み」の形で理由を表す。
 四句「晴れぬ雲居に」は、晴れることのない雲の中に、の意。山国の雲と晴れない心とを重ねている。
 結句「わぶと答へよ」は、わびしく思っていると答えてくれ、の意。命令形で結び、使いの人への依頼とする。本巻の第九百六十二首と同じ結句である。

くもゐ:雲のある所、雲
わぶ:つらく思う、わびしく暮らす
作者
小野貞樹
出典
古今和歌集
前の歌
しかりとて背かれなくに事しあれば まづ嘆かれぬあな憂世の中
次の歌
わびぬれば身をうき草の根を絶えて 誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ