あはれてふ事こそうたて世の中を
思ひ離れぬほだしなりけれ
- 歌の意味
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「あわれ」という情けこそ、困ったことに、世の中を思い捨てることのできない束縛なのであった。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 939
詞書「題しらず」
人や物に心を動かす「あはれ」という感情こそが、世を捨てようとする心を引き留める束縛になると詠んだ歌である。情にもろい自らの心を「うたて」と嘆きつつ、その情けを捨てきれない心を見つめている。
次歌の第九百四十首も「あはれてふ」で始まり、同じ語をめぐる歌が並べられている。また本巻の第九百五十五首も「ほだしなりけれ」で結び、世を離れようとする心を引き留めるものを詠んでいる。
作者は小野小町である。六歌仙、三十六歌仙の一人で、出自は明らかでないが、仁明天皇の頃の宮廷に仕えたとみられる。
初句「あはれてふ」は、「あはれ」という、の意。「てふ」は「といふ」がつづまった形である。次歌の第九百四十首と同じ初句である。
二句「事こそうたて」は、そのことこそ困ったことに、の意。「うたて」は、いやなことに、情けないことに、の意の副詞である。係助詞「こそ」は結句の已然形「けれ」と呼応する。
三句「世の中を」は、俗世間を、の意。四句の「思ひ離れぬ」の対象となる。
四句「思ひ離れぬ」は、思い捨てることができない、の意。「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形である。
結句「ほだしなりけれ」は、束縛であったのだ、の意。「けれ」は詠嘆の助動詞「けり」の已然形で、「こそ」の結びとなる。本巻の第九百五十五首と同じ結句である。
ほだし:馬の足をつなぐ綱。転じて、自由を妨げる束縛
- 作者
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小野小町
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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わびぬれば身をうき草の根を絶えて 誘ふ水あらばいなむとぞ思ふ
- 次の歌
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あはれてふ言の葉ごとに置く露は 昔を恋ふる涙なりけり