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山里は物の惨慄き事こそあれ
世の憂きよりは住みよかりけり

歌の意味
山里はなにかと寂しいことはあるが、世の中のつらさに比べれば住みよいものであった。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 944

詞書「題しらず」
 山里の暮らしの寂しさを認めつつ、俗世のつらさよりは住みよいと詠んだ歌である。寂しさと世の憂さとを比べ、山里に心の安らぎを見いだしている。
 世を離れて山に住むことを願う歌は、この後の本巻の第九百五十首から第九百五十四首にかけて続き、この歌はその先駆けとなっている。
 作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。

 初句「山里は」は、山あいの里は、の意。都に対するものとしての山里を主題に掲げている。
 二句「物の惨慄き」は、なにかと寂しい、の意。本文は「惨慄き」と漢字で表記し、読み仮名の行によって「さびしき」と読む。
 三句「事こそあれ」は、ことはあるが、の意。係助詞「こそ」を已然形「あれ」で受け、逆接で下の句に続けている。
 四句「世の憂きよりは」は、俗世のつらさに比べれば、の意である。
 結句「住みよかりけり」は、住みよいものであった、の意。「けり」は詠嘆を表す。

やまざと:山の中の人里
作者
よみ人しらず
出典
古今和歌集
前の歌
世の中にいづらわが身のありてなし あはれとやいはむあなうとやいはむ
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白雲の絶えずたなびく峰にだに 住めば住みぬる世にこそありけれ