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白雲の絶えずたなびく峰にだに
住めば住みぬる世にこそありけれ

歌の意味
白雲が絶えずたなびいている峰にさえ、住めば住めてしまう世の中であったのだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 945

詞書「題しらず」
 白雲の絶えずかかる山の峰のような人里離れた所でも、住んでみれば住めるものだと詠んだ歌である。前歌の山里の住みよさを受け、どこであっても住めば住めるという感慨を示している。
 作者の惟喬親王は皇位を継ぐことなく、のちに出家して比叡山麓の小野に隠棲した。そうした境遇を思うと、山深い地での暮らしを受け入れる心が一層深く読み取れる。本巻の第九百七十首の在原業平の歌は、小野に隠棲した親王を雪の中に訪ねた折のものである。
 作者の「これたかのみこ」は惟喬親王である。文徳天皇の第一皇子で、母は紀名虎の娘静子。在原業平らと交わりがあり、晩年は出家して小野に住んだ。

 初句「白雲の」は、山にかかる白い雲の、の意である。
 二句「絶えずたなびく」は、絶えず横に長く漂っている、の意である。
 三句「峰にだに」は、峰にさえ、の意。「だに」は軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞である。
 四句「住めば住みぬる」は、住めば住めてしまう、の意。同じ動詞を重ね、慣れることの不思議を表している。
 結句「世にこそありけれ」は、世の中であったのだ、の意。係助詞「こそ」を已然形「けれ」で結ぶ。

たなびく:雲や霞が横に長く漂う
作者
惟喬親王
出典
古今和歌集
前の歌
山里は物の惨慄き事こそあれ 世の憂きよりは住みよかりけり
次の歌
知りにけむ聞きても厭へ世の中は 波の騒ぎに風ぞしくめる