み吉野の山のあなたに宿もがな
世の憂き時の隠れ家にせむ
- 歌の意味
-
吉野の山の向こうに宿があればよいのに。世の中がつらい時の隠れ家にしよう。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌下 950
詞書「題しらず」
吉野の山のさらに向こうに宿がほしい、世がつらい時の隠れ家にしたい、と願う歌である。吉野は古来、世を逃れる地として意識された山であり、その奥にさらに身を隠したいという強い思いが表れている。
次歌の第九百五十一首も「み吉野の」を詠み込み、吉野の山を世を逃れる地とする歌が二首続いている。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「み吉野の」は、大和国の吉野の、の意。「み」は美称である。
二句「山のあなたに」は、山の向こう側に、の意である。
三句「宿もがな」は、宿があればよいのに、の意。「もがな」は願望の終助詞で、三句切れである。
四句「世の憂き時の」は、世の中がつらい時の、の意である。
結句「隠れ家にせむ」は、隠れ家にしよう、の意。「む」は意志の助動詞である。
かくれが:人目を避けて住む家
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
世の中を厭ふ山辺の草木とや あなうの花の色に出でにけむ
- 次の歌
-
世にふれば憂さこそまされみ吉野の 岩のかけ道踏みならしてむ