世の憂きめ見えぬ山路へ入らむには
思ふ人こそほだしなりけれ
- 歌の意味
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世のつらい目に遭うことのない山道へ入ろうとするには、恋しく思う人こそが束縛なのであった。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 955
詞書「同じ文字なき歌」
詞書に「同じ文字なき歌」とあるように、一首の中で同じ仮名を二度用いないという技巧で詠まれた歌である。世の憂さを逃れて山に入ろうとしても、愛する人がいることが足かせになると詠んでいる。
本巻の第九百三十九首の小野小町の歌も「ほだしなりけれ」で結び、世を離れようとする心を引き留めるものを詠む点で対応している。小町が「あはれ」という情けを束縛としたのに対し、この歌は「思ふ人」を束縛としている。
作者の「もののへのよしな」は物部良名である。平安時代前期の人物とされるが、経歴は明らかでない。
初句「世の憂きめ」は、世のつらい目、つらい経験、の意である。
二句「見えぬ山路へ」は、つらい目に遭うことのない山道へ、の意である。
三句「入らむには」は、入ろうとするには、の意である。
四句「思ふ人こそ」は、恋しく思う人こそ、の意。係助詞「こそ」は結句の已然形「けれ」と呼応する。
結句「ほだしなりけれ」は、束縛であったのだ、の意。本巻の第九百三十九首と同じ結句である。
やまぢ:山の中の道
ほだし:自由を妨げる束縛
- 作者
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物部良名
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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世の中の憂けくに飽きぬ奥山の 木の葉に降れる雪や消なまし
- 次の歌
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世を捨てて山に入る人山にても なほ憂き時はいづち行くらむ