わが身から憂き世の中と名づけつつ
人のためさへ悲しかるらむ
- 歌の意味
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自分の身のせいでこの世を「憂き世の中」と名づけながら、どうして他の人のためにまでも悲しく思われるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 960
詞書「題しらず」
世がつらいのは自分の身の上のせいでありながら、「憂き世」と名づけて世のせいにし、そのうえ他人の身の上までも悲しく思われることを詠んだ歌である。自らの嘆きが他者への同情にまで広がる心の動きをとらえている。
本巻の第九百四十八首が世の憂さをわが身一つのためかと問うたのと通じ、世の憂さと自身との関わりを見つめている。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
なお本文の三句は「なつけつつ(名づけつつ)」とあり、読み仮名の行の「なけきつつ(嘆きつつ)」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「わが身から」は、自分の身が原因で、の意。「から」は原因を表す。
二句「憂き世の中と」は、つらい世の中だと、の意である。
三句「名づけつつ」は、名づけながら、の意。「つつ」は反復、継続を表す。
四句「人のためさへ」は、他人のためにまでも、の意。「さへ」は添加を表す副助詞である。
結句「悲しかるらむ」は、悲しく思われるのだろうか、の意。「らむ」は原因を推量する現在推量の助動詞である。
なづく:名をつける、呼ぶ
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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木にもあらず草にもあらぬ竹のよの 端にわが身はなりぬべらなり
- 次の歌
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思ひきや鄙の別れに衰へて 海人の縄たき漁りせむとは