古典和歌stream

ありはてぬ命待つ間のほどばかり
憂きことしげく思はずもがな

歌の意味
いつまでも生き続けることはできない命の、その終わりを待つ間ぐらいは、つらいことをあれこれと思わずにいたいものだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 965

詞書「官解けて侍りける時よめる」
 前歌と同じく、官を解かれた時の歌である。限りある命の終わりを待つ短い間くらいは、つらいことを繰り返し思わずにいたいと願っている。人生の短さを見つめ、せめて心穏やかに過ごしたいという思いが表れている。
 作者の「平さたふん」は平貞文である。桓武平氏で、平好風の子。平中の名で知られる。

 初句「ありはてぬ」は、最後まで生き続けることのない、の意。「はつ」は最後まで…し終える意である。
 二句「命待つ間の」は、命の終わりを待つ間の、の意である。
 三句「ほどばかり」は、その間ぐらいは、の意。「ばかり」は程度を表す副助詞である。
 四句「憂きことしげく」は、つらいことを絶え間なく、の意である。
 結句「思はずもがな」は、思わずにいたいものだ、の意。「もがな」は願望の終助詞である。

ありはつ:最後まで生き続ける
作者
平貞文
出典
古今和歌集
前の歌
憂き世には門させりとも見えなくに などかわが身の出でがてにする
次の歌
筑波嶺の木のもとごとに立ちぞ寄る 春のみ山の蔭を恋ひつつ