筑波嶺の木のもとごとに立ちぞ寄る
春のみ山の蔭を恋ひつつ
- 歌の意味
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筑波山の木の下ごとに立ち寄っては身を寄せている。春の宮の御恵みという、春の深山の木陰を恋い慕いながら。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 966
詞書「親王の宮の帯刀に侍りけるを、宮仕へ仕うまつらずとて解けて侍りける時によめる」
春宮の帯刀として仕えていた作者が、勤めを怠ったとして職を解かれた時に詠んだ歌である。あちこちの木の下に立ち寄るように人々を頼りながらも、もとの主君である宮の恩恵を恋い慕う心を表している。
「春のみ山」には東宮を意味する「春の宮」を響かせ、主君の庇護を木陰にたとえている。
作者の「みやちのきよき」は宮道潔興である。平安時代前期の官人で、経歴の詳細は明らかでない。
初句「筑波嶺の」は、常陸国の筑波山の、の意。筑波山の木陰を恩恵にたとえる趣向は、巻第二十の第千九十五首の東歌にも見られる。
二句「木のもとごとに」は、木の下ごとに、の意。あちこちの人の庇護を頼ることを表す。
三句「立ちぞ寄る」は、立ち寄っては身を寄せる、の意。係助詞「ぞ」を受けて連体形「寄る」で結ぶ。三句切れで、下の句と倒置の関係にある。
四句「春のみ山の」は、春の深山の、の意。「み山」の「み」に「宮」を掛け、東宮を意味する「春の宮」を表す掛詞としている。
結句「蔭を恋ひつつ」は、木陰、すなわち御恵みを恋い慕いながら、の意である。
みやま:「深山」と、東宮を意味する「春の宮」の「宮」を掛ける
かげ:木陰。転じて、庇護、恩恵
たちはき:東宮を警護する武官、帯刀
- 作者
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宮道潔興
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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ありはてぬ命待つ間のほどばかり 憂きことしげく思はずもがな
- 次の歌
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光なき谷には春もよそなれば 咲きてとく散る物思ひもなし