年を経て住みこし里を出でていなば
いとどふかくさ野とやなりなむ
- 歌の意味
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長年住んできたこの里を私が出て行ってしまったならば、深草という名のとおり、いよいよ草深い野となってしまうのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 971
詞書「深草の里に住み侍りて、京へまうで来とて、そこなりける人によみて送りける」
深草の里に住んでいた作者が、京へ移ることになり、その地の女に贈った歌である。自分が去った後の里を思いやり、いよいよ草深い野になるだろうかと詠んで、残される女への名残を伝えている。
次歌の第九百七十二首はこれに対する女の返しで、この贈答は伊勢物語第百二十三段にも見える。
作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。「朝臣」は敬称である。阿保親王の子で、母は桓武天皇の皇女伊都内親王。六歌仙、三十六歌仙の一人で、伊勢物語の主人公に擬せられる。
初句「年を経て」は、長い年月を経て、の意である。
二句「住みこし里を」は、住んできた里を、の意。「こし」はカ変動詞「来」に過去の助動詞「き」の連体形が付いた形である。
三句「出でていなば」は、出て行ってしまったならば、の意で、仮定条件である。六音の字余りである。
四句「いとどふかくさ」は、いよいよ深く、の意の「いとど深く」と地名の「深草」を掛ける掛詞である。
結句「野とやなりなむ」は、野となってしまうのだろうか、の意。「や」は疑問の係助詞で、「なむ」の「む」の連体形と呼応する。次歌の第九百七十二首の初句「野とならば」がこれを受けている。
ふかくさ:山城国の地名「深草」と、草が深く茂る意の「深く」を掛ける
- 作者
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在原業平
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや 雪踏みわけて君を見むとは
- 次の歌
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野とならば鶉となきて年は経む かりにだにやは君が来ざらむ