難波潟うらむべき間も思ほえず
いづこをみつのあまとかはなる
- 歌の意味
-
難波潟の浦ではないが、あなたが私を恨むような隔たりがあったとも思われない。いったいどこにつらい目を見たというので、御津の尼となどなるのか。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌下 974
詞書「返し」
前歌の第九百七十三首に対する男の返しとされる歌である。女に恨まれるような隔たりがあったとは思わないのに、どこにつらい目を見て尼になどなったのかと、女の出家を問い返している。
前歌と同じく「みつ」「あま」の掛詞を用い、難波の縁語で応じている。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「難波潟」は、難波の干潟の、の意。前歌の「難波の浦」を受け、二句の「うら」を導いている。
二句「うらむべき間も」は、恨むような隔たりも、の意。「うら」に「浦」と「恨む」を掛ける掛詞である。「間」は二人の間の隔たりをいう。
三句「思ほえず」は、思われない、の意で、三句切れである。
四句「いづこをみつの」は、どこを見たというので、の意。「みつ」は「見つ」と「御津」を掛ける掛詞で、前歌の四句を受けている。
結句「あまとかはなる」は、尼となどなるのか、の意。「あま」は「尼」と「海人」を掛ける掛詞である。「かは」は反語の係助詞で、連体形「なる」で結ぶ。
なにはがた:摂津国難波の干潟
うらむ:「浦」と「恨む」を掛ける
みつ:「見つ」と、難波の地名「御津」を掛ける
あま:「尼」と「海人」を掛ける
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
我を君難波の浦にありしかば うきめをみつのあまとなりにき
- 次の歌
-
今更に訪ふべき人も思ほえず 八重葎して門させりてへ