今更に訪ふべき人も思ほえず
八重葎して門させりてへ
- 歌の意味
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今さら訪ねて来るはずの人も思い当たらない。八重葎が茂って門を閉ざしていると伝えてくれ。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 975
詞書「返し」
前の贈答に続けて置かれた返しの歌である。今さら訪ねて来る人も思い当たらないので、幾重にも茂った葎が門を閉ざしていると伝えよと、世を離れて人を寄せつけない心を示している。
「八重葎」は荒れた住まいの象徴で、訪れる人のない寂しさとともに、もう誰にも会うまいという決意を表している。本巻の第九百六十四首の「門させりとも」と同じく、門を閉ざすことを詠んでいる。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「今更に」は、今さら、の意。本巻の第九百五十七首と同じ初句である。
二句「訪ふべき人も」は、訪ねて来るはずの人も、の意である。
三句「思ほえず」は、思い当たらない、の意。前歌の第九百七十四首の三句と同じ語で、三句切れである。
四句「八重葎して」は、幾重にも生い茂った葎によって、の意である。
結句「門させりてへ」は、門を閉ざしていると言え、の意。「させ」は「さす」の已然形、「り」は存続の助動詞、「てへ」は「と言へ」がつづまった形である。
やへむぐら:幾重にも生い茂った葎。荒れた家の象徴
さす:門や戸を閉ざす
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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難波潟うらむべき間も思ほえず いづこをみつのあまとかはなる
- 次の歌
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水の面に生ふる五月の浮草の うきことあれや根を絶えて来ぬ