いざここにわが世は経なむ菅原や
伏見の里の荒れまくも惜し
- 歌の意味
-
さあ、ここで私の一生を過ごしてしまおう。菅原の伏見の里が荒れてしまうのも惜しいから。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌下 981
詞書「題しらず」
菅原の伏見の里に住み続けようと決意する歌である。住む人がいなくなれば里が荒れてしまうのが惜しいとして、この地で一生を終えようと詠んでいる。
ここから住まいや里を詠む歌が続き、本巻の第九百八十四首や第九百八十六首など、荒れた宿や古びた里を詠む歌と響き合っている。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「いざここに」は、さあここに、の意。「いざ」は人を誘ったり、自ら決意したりする時の語である。
二句「わが世は経なむ」は、私の一生を過ごしてしまおう、の意。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「む」は意志で、二句切れである。
三句「菅原や」は、大和国の菅原の、の意。「や」は間投助詞で、伏見の里のある地を示している。
四句「伏見の里の」は、大和国菅原の伏見の里の、の意である。
結句「荒れまくも惜し」は、荒れてしまうことも惜しい、の意。「荒れまく」は「荒れむ」のク語法である。倒置により理由を最後に置いている。
あれまく:荒れるであろうこと。「荒れむ」を名詞化した形
ふしみ:大和国菅原の地名
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
思ひやる越の白山知らねども 一夜も夢に越えぬ夜ぞなき
- 次の歌
-
わが庵は三輪の山もと恋しくは とぶらひ来ませ杉立てる門