人ふるす里を厭ひて来しかども
奈良の都も憂き名なりけり
- 歌の意味
-
人に飽きて見捨てるような里が嫌でここへ来たけれども、奈良の都もまた、つらいという評判の場所であった。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌下 986
詞書「初瀬に詣づる道に、奈良の京に宿れりける時よめる」
初瀬に参詣する途中、奈良の旧都に宿った時の歌である。人に飽きて見捨てるような京の里を厭って来たが、奈良の都もまた古びて人に顧みられない都であり、つらいという名を負う所であったと詠んでいる。
人を「古す」里と、都が移って古びた奈良とを重ね、どこにも安住の地のない身の上を嘆いている。本巻の第九百八十一首から続く、里や住まいを詠む歌の一首である。
作者の「二条」は伝未詳の女性で、女房名と見られる。
初句「人ふるす」は、人を古びさせる、飽きて見捨てる、の意である。
二句「里を厭ひて」は、その里を嫌って、の意である。
三句「来しかども」は、やって来たけれども、の意。「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「かども」は逆接を表す。
四句「奈良の都も」は、奈良の旧都も、の意。都が移った後の古びた都である。
結句「憂き名なりけり」は、つらいという評判であったよ、の意。「けり」は詠嘆を表す。
ふるす:古びさせる、飽きて見捨てる
はつせ:大和国の地名。長谷寺がある
- 作者
-
二条
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
わび人の住むべき宿と見るなへに 嘆き加はる琴の音ぞする
- 次の歌
-
世の中はいづれかさしてわがならむ 行きとまるをぞ宿と定むる