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ふるさとは見しごともあらず斧の柄の
朽ちし所ぞ恋しかりける

歌の意味
帰って来た故郷の都は、以前見たようではない。斧の柄が朽ちるほど長い時を碁に興じて過ごした筑紫の地こそ恋しいことだ。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 991

詞書「筑紫に侍りける時に、まかり通ひつつ碁打ちける人のもとに、京に帰りまうで来てつかはしける」
 筑紫にいた時に通って碁を打っていた相手に、京へ帰ってから贈った歌である。久しぶりの都はかつて見たようではなく、碁に興じて時を忘れた筑紫の地こそ恋しいと詠んでいる。
 「斧の柄の朽ちし所」は、晋の王質が山中で童子の碁を見ているうちに、斧の柄が朽ちるほどの年月が過ぎていたという中国の故事を踏まえ、碁を打って過ごした所を表している。
 作者の「きのとものり」は紀友則である。紀貫之の従兄で、古今和歌集の撰者の一人であったが、完成前に没した。三十六歌仙の一人である。

 初句「ふるさとは」は、昔住んでいた所は、の意。ここでは京を指す。
 二句「見しごともあらず」は、以前見たようではない、の意。八音の字余りで、二句切れである。
 三句「斧の柄の」は、斧の柄が、の意。中国の故事を踏まえている。
 四句「朽ちし所ぞ」は、朽ちた所こそ、の意。碁に夢中で時を忘れた筑紫の地を指す。係助詞「ぞ」は結句の連体形と呼応する。
 結句「恋しかりける」は、恋しいことだ、の意。「ける」は詠嘆の助動詞「けり」の連体形で、「ぞ」の結びである。

ふるさと:昔住んでいた所、なじみの土地
をののえ:斧の柄。王質の故事から、時の経つのを忘れることのたとえ
作者
紀友則
出典
古今和歌集
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飛鳥川淵にもあらぬわが宿も せにかはりゆくものにぞありける
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