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飽かざりし袖の中にや入りにけむ
わが魂のなき心地する

歌の意味
名残の尽きなかったあなたの袖の中に入ってしまったのだろうか。私の魂がなくなってしまったような心地がする。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 992

詞書「女友だちと物語して、別れて後につかはしける」
 女友だちと語り合って別れた後に贈った歌である。話し足りない名残惜しさから、自分の魂が相手の袖の中に入ってしまったようで、魂が抜けたような心地がすると詠んでいる。
 魂が思う人のもとへ離れて行くという古代の考え方を踏まえ、友との別れの名残を情感豊かに表している。
 作者の「みちのく」は陸奥である。平安時代前期の女性で、伝記は明らかでない。

 初句「飽かざりし」は、満ち足りなかった、名残の尽きなかった、の意。「し」は過去の助動詞「き」の連体形である。
 二句「袖の中にや」は、あなたの袖の中に、の意。「や」は疑問の係助詞で、三句の「けむ」と呼応する。
 三句「入りにけむ」は、入ってしまったのだろうか、の意で、三句切れである。
 四句「わが魂の」は、私の魂が、の意である。
 結句「なき心地する」は、なくなったような気持ちがする、の意である。

たましひ:魂、人の心の働きのもととなるもの
作者
陸奥
出典
古今和歌集
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ふるさとは見しごともあらず斧の柄の 朽ちし所ぞ恋しかりける
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