風吹けば沖つ白波たつた山
夜半にや君がひとり越ゆらむ
- 歌の意味
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風が吹くと沖の白波が立つ、その竜田山を、この夜更けにあなたは一人で越えているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 994
詞書「題しらず」
左注によれば、大和国の女のもとに通っていた男が、河内国に新しい女をつくって通うようになったが、女は恨む様子も見せずに男を送り出していた。男が不審に思い、河内へ行くふりをして庭の植え込みに隠れて見ていると、女は夜更けまで琴をかき鳴らし、嘆きながらこの歌を詠んで寝たので、男はこれを聞いて以後よそへ通わなくなったという。
夫を恨むどころか、夜更けに険しい竜田山を一人越えていく夫の身を案じる女の真心が、この歌の中心である。この話は伊勢物語第二十三段の筒井筒の後半にも見え、大和物語にも伝えられている。
次歌の第九百九十五首も「たつたの山」を詠み、竜田山を詠む歌が二首並んでいる。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「風吹けば」は、風が吹くと、の意である。
二句「沖つ白波」は、沖の白波、の意。「つ」は「の」の意の古い格助詞である。初句から二句までが、白波が「立つ」ことから三句の「たつ」を導く序詞となる。
三句「たつた山」は、大和国と河内国の境にある竜田山である。「たつ」に白波が「立つ」と地名の「竜田」を掛ける掛詞である。
四句「夜半にや君が」は、夜更けにあなたが、の意。「や」は疑問の係助詞で、結句の「らむ」と呼応する。
結句「ひとり越ゆらむ」は、一人で越えているのだろうか、の意。「らむ」は現在推量で、目の前にいない夫の様子を思いやっている。
たつたやま:大和国と河内国の境の山。白波が「立つ」を掛ける
よは:夜中、夜更け
せんざい:庭の植え込み
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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なよ竹のよ長き上に初霜の おきゐて物を思ふころかな
- 次の歌
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誰がみそぎゆふつけ鳥か唐衣 たつたの山にをりはへて鳴く