誰がみそぎゆふつけ鳥か唐衣
たつたの山にをりはへて鳴く
- 歌の意味
-
誰のみそぎのために木綿を付けた鶏なのだろうか。竜田の山で、長く声を引いて鳴いている。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌下 995
詞書「題しらず」
竜田山で長く鳴き続ける鶏の声を聞き、誰のみそぎのための木綿付け鳥なのかと問いかけた歌である。みそぎに用いる木綿を付けた鶏を思い描き、「唐衣」から「裁つ」「織り延へ」と衣の縁語を連ねた技巧的な歌である。
前歌の第九百九十四首に続いて竜田山を詠んでいる。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「誰がみそぎ」は、誰のみそぎのための、の意。みそぎは水で身を清めて罪や穢れを除く行事である。
二句「ゆふつけ鳥か」は、木綿を付けた鶏なのか、の意。世が乱れた時に鶏に木綿を付けて都の四方の関で祭ったことによるとされる。「か」は疑問の係助詞で、二句切れである。
三句「唐衣」は、衣を「裁つ」ことから「たつ」にかかる枕詞である。
四句「たつたの山に」は、竜田の山で、の意。「たつ」に衣を「裁つ」と地名の「竜田」を掛ける掛詞である。前歌の第九百九十四首と同じ山を詠んでいる。
結句「をりはへて鳴く」は、長く声を引いて鳴く、の意。「をりはへ」は時を長く延ばす意に、衣の縁語の「織り延へ」を掛けている。
みそぎ:水で身を清め、罪や穢れを除くこと
ゆふつけどり:木綿を付けた鶏。鶏の異称
たつ:衣を「裁つ」と、地名「竜田」の「たつ」を掛ける
をりはふ:長く延ばし続ける。「織り延ふ」を掛ける
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
風吹けば沖つ白波たつた山 夜半にや君がひとり越ゆらむ
- 次の歌
-
忘られむ時しのべとぞ浜千鳥 行方も知らぬ跡をとどむる