忘られむ時しのべとぞ浜千鳥
行方も知らぬ跡をとどむる
- 歌の意味
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忘れられてしまうような時には、これを見て思い出してくれと、浜千鳥が足跡を残すように、行方も知れないわが身の筆の跡を書きとどめておくのだ。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌下 996
詞書「題しらず」
自分が忘れられる時が来たら、これを見て思い出してほしいと、浜千鳥の足跡のように書き残した筆跡に思いを託した歌である。千鳥の足跡を文字に見立てるのは、鳥の足跡から文字が作られたという中国の故事に基づく和歌の伝統的な見立てである。
本巻の第九百八十九首と「行方も知ら」の語を共有し、行方の定まらない身が、せめて筆の跡を残そうとする心を表している。この歌は巻の終わり近くに置かれ、以下の歌の献上や撰集にかかわる歌へとつながっている。
作者は「読人しらず」とされ、名は伝わらない。
初句「忘られむ」は、忘れられてしまうであろう、の意。「られ」は受身、「む」は推量の助動詞である。
二句「時しのべとぞ」は、その時には思い出してくれと、の意。「し」は強めの助詞とも読め、「しのべ」は命令形である。係助詞「ぞ」を受けて結句の連体形「とどむる」で結ぶ。
三句「浜千鳥」は、浜辺の千鳥である。砂に残す足跡を筆跡に見立てている。
四句「行方も知らぬ」は、行く先もわからない、の意。本巻の第九百八十九首の四句と同じ語を用いている。
結句「跡をとどむる」は、跡を残しておく、の意。千鳥の足跡と、書き残した筆跡とを重ねている。
しのぶ:思い出して慕う
とどむ:あとに残す
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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誰がみそぎゆふつけ鳥か唐衣 たつたの山にをりはへて鳴く
- 次の歌
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神無月時雨降りおけるならの葉の 名におふ宮の古言ぞこれ