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神無月時雨降りおけるならの葉の
名におふ宮の古言ぞこれ

歌の意味
十月の時雨が降り置いた楢の葉の、その「なら」の名を持つ奈良の都の昔の歌、それがこの万葉集である。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 997

詞書「貞観御時、万葉集はいつばかり作れるぞと問はせ給ひければ、よみてたてまつりける」
 清和天皇の貞観年間に、天皇から万葉集はいつごろ作られたのかと尋ねられて、詠んで奉った歌である。時雨に濡れた楢の葉から「奈良」の名を導き、万葉集は奈良の都の時代の古い歌を集めたものだと答えている。
 万葉集の成立についての平安時代の認識を伝える歌として、和歌史の上でも注目される。
 作者の「文屋ありすゑ」は文屋有季である。平安時代前期の官人で、経歴の詳細は明らかでない。

 初句「神無月」は、陰暦十月である。時雨の降る季節である。
 二句「時雨降りおける」は、時雨が降って置いた、の意。「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。八音の字余りである。
 三句「ならの葉の」は、楢の葉の、の意。「なら」に「楢」と都の名の「奈良」を掛ける掛詞である。初句から三句までが四句を導いている。
 四句「名におふ宮の」は、その名を持つ都の、の意。奈良の都を指している。
 結句「古言ぞこれ」は、昔の言葉、古い歌こそこれである、の意。倒置の形で、万葉集を指して答えている。

しぐれ:晩秋から初冬に降ったりやんだりする雨
なら:「楢」と、都の名「奈良」を掛ける
ふること:昔の言葉、古い歌
作者
文屋有季
出典
古今和歌集
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