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葦鶴のひとりおくれて鳴く声は
雲の上まで聞こえつがなむ

歌の意味
葦辺の鶴が一羽だけ仲間に遅れて鳴く声は、雲の上まで聞こえ伝わってほしい。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 998

詞書「寛平御時、歌たてまつりけるついでにたてまつりける」
 宇多天皇の寛平年間に、歌を奉った折に添えて奉った歌である。仲間に遅れて一羽鳴く鶴に、昇進に取り残された自らの身をたとえ、その嘆きが雲の上、すなわち宮中の天皇にまで届いてほしいと願っている。
 「雲の上」は宮中を指す語として和歌で多く用いられる。次歌の第九百九十九首も同じ詞書を持ち、天皇への思いを訴える歌が続いている。
 作者は大江千里である。大江音人の子で、漢詩の句を題とした句題和歌を宇多天皇に献上したことで知られる。中古三十六歌仙の一人である。

 初句「葦鶴の」は、葦の生える水辺にいる鶴の、の意である。
 二句「ひとりおくれて」は、一羽だけ仲間に遅れて、の意。昇進に遅れた身をたとえている。
 三句「鳴く声は」は、鳴く声は、の意である。
 四句「雲の上まで」は、雲の上まで、の意。「雲の上」は宮中をたとえる。
 結句「聞こえつがなむ」は、聞こえ伝わってほしい、の意。「つが」は「継ぐ」の未然形で、「なむ」は他に対する願望の終助詞である。

あしたづ:葦の生える水辺にいる鶴
くものうへ:宮中、皇居
きこえつぐ:聞こえ伝わる
作者
大江千里
出典
古今和歌集
前の歌
神無月時雨降りおけるならの葉の 名におふ宮の古言ぞこれ
次の歌
人知れず思ふ心は春霞 たち出でて君が目にも見えなむ