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人知れず思ふ心は春霞
たち出でて君が目にも見えなむ

歌の意味
人知れず思っている私の心は、春霞が立つように表に出て、あなたの目にも見えてほしい。
鑑賞
巻第十八 雑歌下 999

詞書「寛平御時、歌たてまつりけるついでにたてまつりける」
 前歌の第九百九十八首と同じく、寛平年間に歌を奉った折に添えて奉った歌である。人知れず抱いている思いが、春霞が立ち出るように表に現れ、天皇の目にとまってほしいと願っている。
 前歌が声によって思いが届くことを願ったのに対し、この歌は目に見えることを願っており、耳と目との対をなしている。
 作者の「ふちはらのかちおむ」は藤原勝臣である。平安時代前期の官人で、経歴の詳細は明らかでない。

 初句「人知れず」は、人に知られずに、の意である。
 二句「思ふ心は」は、思っている心は、の意である。
 三句「春霞」は、春に立つ霞である。四句の「たち」を導いている。
 四句「たち出でて君が」は、立ち現れてあなたの、の意。「たち」に霞が「立つ」と表に「立ち出づ」を掛ける掛詞である。
 結句「目にも見えなむ」は、目にも見えてほしい、の意。「なむ」は他に対する願望の終助詞で、前歌の結句の「なむ」と同じ願望の形で結んでいる。

たちいづ:霞が「立つ」と、表に「立ち出づ」を掛ける
作者
藤原勝臣
出典
古今和歌集
前の歌
葦鶴のひとりおくれて鳴く声は 雲の上まで聞こえつがなむ
次の歌
山河の音にのみ聞くももしきを 身をはやながら見るよしもがな