古典和歌stream

いくばくの田を作ればかほととぎす
しでの田長を朝な朝な呼ぶ

歌の意味
どれほど多くの田を作っているからというのか、ほととぎすは「しでの田長」を毎朝毎朝呼んでいる。
鑑賞
巻第十九 雑体 1013

詞書「題しらず」
 ほととぎすの異名「しでの田長」を、田植えを取り仕切る「田長」を呼ぶ声と取りなし、それほど広い田を作っているのかと戯れた歌である。田植えの季節に鳴くほととぎすと農事とを結び付けた、ユーモラスな見立てに誹諧の趣がある。
 作者の「藤原敏行朝臣」は藤原敏行である。陸奥出羽按察使藤原富士麻呂の子で、蔵人頭、右兵衛督に至った。能書家としても名高く、三十六歌仙の一人である。

 初句「いくばくの」は、どれほど多くのの意で、疑問を表す。
 二句「田を作ればか」は、順接の「ば」に疑問の「か」が付き、田を作っているからか、と理由を問う。
 三句「ほととぎす」は、田植えの時期に鳴く鳥で、農事と結び付けて詠まれた。
 四句「しでの田長を」は、ほととぎすの異名「しでのたをさ」で、ここでは田植えを指図する「田長」の意に取りなしている。
 結句「朝な朝な呼ぶ」は、毎朝鳴くほととぎすの声を、田長を呼び立てる声に見立てたものである。

しでのたをさ:ほととぎすの異名
たをさ:田の仕事を取り仕切る長
作者
藤原敏行
出典
古今和歌集
前の歌
山吹の花色衣主や誰 問へど答へずくちなしにして
次の歌
いつしかとまたく心をはぎに上げて 天の河原を今日や渡らむ