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秋の野になまめき立てる女郎花
あなかしかまし花もひと時

歌の意味
秋の野になまめかしく立っている女郎花よ、ああやかましい。花の盛りもひと時にすぎないのに。
鑑賞
巻第十九 雑体 1016

詞書「題しらず」
 女郎花を美しい女性に見立て、色っぽく立ち並ぶさまを「あなかしかまし」と一喝した歌である。僧である作者が女たちを戒めるような構図に可笑しさがあり、花の盛りの短さを説く結句には無常観も漂う。この歌から第千十九首まで、女郎花を詠む歌が四首続く。
 作者の「僧正へんせう」は遍昭である。俗名は良岑宗貞で、桓武天皇の孫にあたる。仁明天皇に仕えたが、天皇の崩御を機に出家し、僧正に至った。素性法師の父で、六歌仙、三十六歌仙の一人である。

 初句「秋の野に」は、女郎花の咲く場所を示す。
 二句「なまめき立てる」は、「なまめく」が若々しく艶っぽく振る舞う意で、女郎花を女性に見立てる擬人法である。
 三句「女郎花」は、名に「女」の字を含むことから、女性になぞらえられる秋の七草である。ここでは呼びかけとなる。
 四句「あなかしかまし」は、「あな」が感動詞、「かしかまし」がやかましいの意で、四句切れである。
 結句「花もひと時」は、花の盛りも一時にすぎないと諭す言葉で、体言止めである。

なまめく:若々しく艶っぽく振る舞う
をみなへし:秋の七草の一つ。名から女性に見立てられる
作者
遍昭
出典
古今和歌集
前の歌
睦言もまだ尽きなくに明けぬめり いづらは秋の長してふ夜は
次の歌
秋来れば野辺にたはるる女郎花 いづれの人かつまで見るべき