恋しきが方も方こそありと聞け
立てれ居れどもなき心地かな
- 歌の意味
-
恋しさにもそれなりの方角があると聞いているのに、立っていても座っていても、その方角がないような心地がすることだ。
- 鑑賞
-
巻第十九 雑体 1024
詞書「題しらず」
物にはそれぞれ向かうべき方角があるはずなのに、恋しさだけはどちらを向いても身の置きどころがない、と嘆く歌である。「方も方こそ」の重ねや、「立てれ居れども」という口語的な言い回しに誹諧の味がある。
作者は不明で、「よみ人しらず」とされている。
初句「恋しきが」は、恋しさが、の意である。
二句「方も方こそ」は、「方」を重ね、恋しさにもそれなりの方角があるはずだ、の意を強める。
三句「ありと聞け」は、「こそ」の結びで已然形「聞け」となり、逆接的に下へ続く。
四句「立てれ居れども」は、立っていても座っていても、の意である。
結句「なき心地かな」は、方角がない、身の置きどころのない心地だ、と詠嘆する。
かた:方角、方向
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
枕より後より恋の攻め来れば せむ方なみぞ床中にをる
- 次の歌
-
ありぬやと試みがてら逢ひ見ねば 戯れにくきまでぞ恋しき