みみなしの山のくちなし得てしかな
おもひの色の下染めにせむ
- 歌の意味
-
耳成山の梔子を手に入れたいものだ。思いの緋色の下染めにしよう。
- 鑑賞
-
巻第十九 雑体 1026
詞書「題しらず」
緋色に染める前に梔子で黄色く下染めする染色法を踏まえ、梔子(口無し)で下染めすれば、恋の思いを口に出さずに秘めておける、という機知の歌である。「耳無し」の山の「口無し」と、耳と口を重ねた言葉遊びが誹諧の趣となっている。
作者は不明で、「よみ人しらず」とされている。
初句「みみなしの」は、大和三山の一つ耳成山に、「耳無し」を掛ける掛詞である。
二句「山のくちなし」は、梔子に「口無し」を掛ける掛詞である。初句と合わせ、耳も口もないものを重ねる。
三句「得てしかな」は、「てしかな」が願望を表し、手に入れたいものだ、の意である。三句切れである。
四句「おもひの色の」は、「思ひ」の「ひ」に「緋」を掛け、恋の思いを緋色にたとえる掛詞である。
結句「下染めにせむ」は、本染めの前に下地として染めることで、梔子で黄に下染めしてから緋を重ねる染色法による。
みみなし:大和の耳成山と、「耳無し」を掛ける
くちなし:黄色の染料となる「梔子」と、「口無し」を掛ける
おもひ:恋の「思ひ」と、「緋(ひ)」の色を掛ける
したぞめ:本染めの前に下地として染めること
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
ありぬやと試みがてら逢ひ見ねば 戯れにくきまでぞ恋しき
- 次の歌
-
あしひきの山田のそほづおのれさへ 我を欲してふうれはしきこと