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富士の嶺のならぬおもひに燃えば燃え
神だに消たぬむなし煙を

歌の意味
富士の嶺の火のように、かなわぬ恋の思いの火に燃えるなら燃えるがよい。神でさえ消すことのない、むなしい煙なのだから。
鑑賞
巻第十九 雑体 1028

詞書「題しらず」
 かなわぬ恋に燃える相手に向かい、それは神でさえ消さない富士の煙のようにむなしいものだから、燃えたければ勝手に燃えよと突き放した歌である。恋の思いを富士の噴煙にたとえる大仰さに誹諧の趣がある。
 作者の「きのめのと」は紀乳母で、名は全子とされる。陽成天皇の乳母であった。

 初句「富士の嶺の」は、富士山の頂の意である。当時の富士は噴煙を上げており、燃える恋の象徴として詠まれた。
 二句「ならぬおもひに」は、「ならぬ」が成就しない意で、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛ける掛詞である。
 三句「燃えば燃え」は、燃えるなら燃えよ、と突き放す言い方である。三句切れである。
 四句「神だに消たぬ」は、「だに」が類推で、神でさえ消さない、の意である。
 結句「むなし煙を」は、「を」が詠嘆の間投助詞で、むなしい煙であるのに、と余情を残す。

ね:山の頂、峰
おもひ:恋の「思ひ」と、「火」を掛ける
けつ:消す
作者
紀乳母
出典
古今和歌集
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あしひきの山田のそほづおのれさへ 我を欲してふうれはしきこと
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