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春の野の茂き草葉の妻恋に
飛び立つ雉のほろろとぞ鳴く

歌の意味
春の野の茂った草葉の中から、妻を恋い慕って飛び立つ雉が、ほろろと鳴いている。
鑑賞
巻第十九 雑体 1033

詞書「題しらず」
 妻を恋い慕って飛び立つ雉の姿を詠んだ歌である。「ほろろ」という擬音語を歌に取り入れた点が誹諧とされる。次歌の妻なき鹿の歌と、春と秋、雉と鹿の対をなしている。
 作者は平貞文である。平好風の子で、左兵衛佐に至った。平中と呼ばれ、『平中物語』の主人公とされる色好みの人物である。

 初句「春の野の」は、次歌の初句「秋の野に」と対をなす。
 二句「茂き草葉の」は、雉が身を潜める草むらを描く。
 三句「妻恋に」は、雉が妻を恋うて鳴く鳥とされたことによる。
 四句「飛び立つ雉の」は、草むらから飛び立つ雉の姿である。
 結句「ほろろとぞ鳴く」は、「ほろろ」が雉の鳴き声や羽音を表す擬音語で、「ぞ」と連体形「鳴く」の係り結びである。

つまごひ:雌雄が互いを恋い慕うこと
作者
平貞文
出典
古今和歌集
前の歌
思へどもなほ疎まれぬ春霞 かからぬ山もあらじと思へば
次の歌
秋の野に妻なき鹿の年を経て なぞわが恋のかひよとぞ鳴く