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蝉の羽のひとへに薄き夏衣
なればよりなむものにやはあらぬ

歌の意味
蝉の羽のように一重で薄い夏衣は、着なれてくればよれてしわが寄るものではないか。(ひたすら薄情なあの人も、なれ親しめば心を寄せてくれるものではないか。)
鑑賞
巻第十九 雑体 1035

詞書「題しらず」
 夏衣を詠みながら、「ひとへ」「なれ」「より」に掛詞を仕込み、薄情な相手も馴れ親しめば心を寄せてくれるだろうと、恋の期待を込めた歌である。衣の縁語を連ねて恋を語る機知が誹諧の趣となっている。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、甲斐少目、和泉大掾などを歴任した。三十六歌仙の一人である。

 初句「蝉の羽の」は、薄いものの比喩として、二句の「ひとへに薄き」を導く。
 二句「ひとへに薄き」は、衣の「一重」と、ひたすらの意の「偏に」を掛ける掛詞である。相手の薄情をほのめかす。
 三句「夏衣」は、薄物の夏の衣である。
 四句「なればよりなむ」は、衣が着古されて柔らかくなる「萎れ」と人に「馴れ」、衣にしわが「縒り」と人が心を「寄り」をそれぞれ掛ける掛詞である。
 結句「ものにやはあらぬ」は、「やは」が反語で、〜ではないか、の意である。

ひとへ:衣の「一重」と、ひたすらの意の「偏(ひとへ)」を掛ける
なる:衣が着古されて柔らかくなる「萎る」と、人に「馴る」を掛ける
よる:衣にしわが「縒る」と、人が心を「寄る」を掛ける
作者
凡河内躬恒
出典
古今和歌集
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秋の野に妻なき鹿の年を経て なぞわが恋のかひよとぞ鳴く
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