我をのみ思ふと言はばあるべきを
いでや心は大幣にして
- 歌の意味
-
私だけを思っていると言うのなら、それでよいのだが、いやはや、あの人の心は大幣のように、あちこちから引かれているのだ。
- 鑑賞
-
巻第十九 雑体 1040
詞書「題しらず」
大幣は祓えの後に人々が引き寄せて身を撫でたことから、多くの人に引かれる多情な心のたとえとされる。相手の多情を大幣にたとえて恨む歌である。巻第十四の第七百六首にも、引く手あまたの大幣に多情な人をたとえた歌がある。前歌に続いて「思ふ」の語を用いている。
作者は不明で、「よみ人しらず」とされている。
初句「我をのみ」は、私だけを、の意である。
二句「思ふと言はば」は、仮定条件で、思っていると言うならば、の意である。
三句「あるべきを」は、「を」が逆接で、それでよいのだが、の意である。
四句「いでや心は」は、「いでや」が、いやもう、という嘆息の感動詞である。
結句「大幣にして」は、言いさしの形で余情を残す。
おほぬさ:祓えに用いる大きな幣。引き寄せる人が多いことから、多情な人のたとえとされる
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
思へども思はずとのみ言ふなれば いなや思はじ思ふかひなし
- 次の歌
-
我を思ふ人を思はぬ報いにや わが思ふ人の我を思はぬ