わびしらにましらな鳴きそあしひきの
山のかひある今日にやはあらぬ
- 歌の意味
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猿よ、わびしげに鳴くな。山の峡に、法皇のお出ましという甲斐のある今日ではないか。
- 鑑賞
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巻第十九 雑体 1067
詞書「法皇西川におはしましたりける日、猿山の峡に叫ぶといふことを題にてよませたまうける」
宇多法皇が西川(大堰川)に御幸した日、「猿山の峡に叫ぶ」という題で詠ませた折の歌である。猿の声は哀れを誘うものとされたが、法皇の御幸という晴れの日なのだから悲しげに鳴くなと猿に呼びかける。「峡」に「甲斐」を掛け、祝意を込めた機知の歌である。
作者の「みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、甲斐少目、和泉大掾などを歴任した。三十六歌仙の一人である。
初句「わびしらに」は、わびしそうに、の意である。
二句「ましらな鳴きそ」は、「ましら」が猿、「な〜そ」が禁止で、猿よ鳴くな、の意である。二句切れである。
三句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
四句「山のかひある」は、山あいの「峡」と「甲斐」を掛ける掛詞で、題の「山の峡」を詠み込む。本巻の第千五十七首が同じ掛詞で「かひなく」と嘆いたのと反対に、「かひある」と祝意を表す。
結句「今日にやはあらぬ」は、「やは」が反語で、今日ではないか、の意である。
ましら:猿
かひ:山あいの「峡」と、「甲斐」を掛ける
にしかは:京都西郊を流れる大堰川の別称
- 作者
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凡河内躬恒
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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梅の花咲きての後のみなればや すきものとのみ人の言ふらむ
- 次の歌
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世を厭ひ木の下ごとに立ち寄りて うつぶし染めの麻の衣なり