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我が門の板井の清水里遠み
人し汲まねば水草生ひにけり

歌の意味
我が家の門の板井の清水は、里が遠いので人が汲みに来ないから、水草が生えてしまったことだ。
鑑賞
巻第二十 大歌所御歌 1079

詞書は前の歌に続き「神遊びの歌 採物の歌」
 家の門の井戸が、里から遠いために人に汲まれず水草が生えてしまったと歌う。人の訪れのないさびしさがこめられ、訪れの絶えた恋の嘆きとも読める。採物の杓(ひさご)にちなむ歌で、採物の歌の一連を締めくくる。作者は記されていない。
 採物の歌は、神楽で舞人が手に持つ採物(榊、弓、杓、葛など)を題として歌われた神楽歌である。本巻の第千七十四首から第千七十九首までの六首がこの一連をなす。

 初句「我が門の」は、我が家の門のの意で、歌の舞台を身近な場所に置く。
 二句「板井の清水」は、板で囲った井戸の清らかな水の意である。採物の杓で汲むものとして詠まれる。
 三句「里遠み」は、里が遠いのでの意で、「み」は原因理由を表す接尾語である。
 四句「人し汲まねば」は、人が汲まないのでの意で、「し」は強意の副助詞、「ば」は順接の確定条件を表す。
 結句「水草生ひにけり」は、水草が生えてしまったことだの意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。本巻の第千七十四首の「茂りあひにけり」、第千七十七首の「色づきにけり」と同じく「にけり」で結び、採物の歌の結びをそろえる。

かど:家の門
いたゐ:板で囲った井戸
みくさ:水草
ひさご:水を汲む杓。採物の一つ
出典
古今和歌集
前の歌
陸奥の安達の真弓我が引かば すゑさへ寄りこ忍び忍びに
次の歌
ささのくま檜隈川に駒止めて しばし水飼へかげをだに見む