- 歌の意味
-
吉備の中山が帯のようにめぐらせている細谷川の、水の音のすがすがしいことよ。
- 鑑賞
-
巻第二十 大歌所御歌 1082
詞書「神遊びの歌 返し物の歌」
吉備の中山のふもとを帯のようにめぐる細谷川の、清らかな水音をたたえる。国の山川の美しさをほめることで、国の繁栄と天皇の治世を寿ぐ歌である。作者は記されていない。
返し物の歌は、神楽の中で調子を変えて歌われた歌をいうとされる。本巻の第千八十一首から第千八十六首までの一連で、第千八十二首以降の五首には、大嘗会で諸国から奉られた歌であることを示す左注が付く。
左注に「この歌は、承和の御嘗の吉備の国の歌」とあり、承和の御嘗は仁明天皇の大嘗会を指し、吉備国(備中)が奉った歌である。大嘗会は天皇が即位後に初めて行う新嘗祭で、悠紀、主基に選ばれた国がその国の地名を詠み込んだ歌を奉った。
初句「真金吹く」は、「吉備」にかかる枕詞である。真金(鉄)を吹きわける意で、吉備が鉄の産地であったことによる。
二句「吉備の中山」は、備前と備中の境にある山で、現在の岡山市にあたる。吉備津神社が鎮まる。
三句「帯にせる」は、帯としているの意で、山が川を帯のようにめぐらせていると見立てる擬人である。「る」は存続を表す。
四句「細谷川の」は、吉備の中山のふもとを流れる谷川の名である。
結句「音のさやけさ」は、水音の清らかなことよの意で、形容詞の語幹に「さ」を付けた体言止めで感動を表す。
まがね:鉄
ふく:鉱石を溶かして金属を取り出す
おほむべ:大嘗会
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
青柳を片糸に縒りて鶯の 縫ふてふ笠は梅の花笠
- 次の歌
-
美作や久米の佐良山さらさらに 我が名は立てじ万代までに