最上川上れば下る稲舟の
いなにはあらずこの月ばかり
- 歌の意味
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最上川を上っては下る稲舟の「いな」ではないが、いやだというのではない。ただこの月だけは待ってほしい。
- 鑑賞
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巻第二十 大歌所御歌 1092
詞書は前の歌に続き「東歌 陸奥歌」
求愛を拒むのではなく、この月だけは都合が悪いのだと答える女の歌である。最上川の稲舟の「いな」の音から、否ではないと言い出す、民謡らしい軽やかな序詞の歌である。「この月ばかり」の理由については、物忌みや神事の月などとする説がある。作者は記されていない。
陸奥歌は、東歌のうち陸奥国(現在の東北地方)の風俗歌で、本巻の第千八十七首から第千九十三首までの七首がこの一連をなす。宮廷に取り入れられた地方の歌謡である。
初句「最上川」は、出羽国を流れる川である。当時の出羽は陸奥から分かれた国で、陸奥歌に含まれる。
二句「上れば下る」は、上っては下るの意で、川を行き来する舟のさまを示す。
三句「稲舟の」は、刈り取った稲を積む舟で、上の句は同音の「いな」を導く序詞である。
四句「いなにはあらず」は、否ではないの意で、稲舟の「いな」と音を重ねる。四句切れである。
結句「この月ばかり」は、この月だけはの意で、下に「待て」などの意が省かれている。言いさして余情を残す。
いなぶね:刈り取った稲を積んで運ぶ舟
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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みさぶらひ御笠と申せ宮城野の 木の下露は雨にまされり
- 次の歌
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君をおきてあだし心を我が持たば 末の松山波も越えなむ