筑波嶺のこのもかのもにかげはあれど
君がみかげにますかげはなし
- 歌の意味
-
筑波山のこちら側にもあちら側にも木陰はあるけれど、わが君のお恵みの陰にまさる陰はない。
- 鑑賞
-
巻第二十 大歌所御歌 1095
詞書「東歌 常陸歌」
筑波山のあちこちに木陰はあるが、君の庇護にまさる陰はないと、主君の恩恵をたたえる。山の木陰を恩恵の「かげ」に重ねた歌で、主君への感謝と頼みの心を表す。作者は記されていない。
東歌は、東国の諸国に伝わる風俗歌が宮廷に取り入れられたもので、国ごとに陸奥歌、相模歌、常陸歌、甲斐歌、伊勢歌の順に並ぶ。
初句「筑波嶺の」は、常陸国の筑波山を示す。次歌の第千九十六首も「筑波嶺の」で始まり、同じ初句をもつ二首が並ぶ。
二句「このもかのもに」は、こちらの面にもあちらの面にもの意で、山のあらゆる方面を示す。
三句「かげはあれど」は、木陰はあるけれどの意で、「ど」は逆接を表す。三句は字余りである。
四句「君がみかげに」は、わが君のお恵みの陰にの意で、「み」は敬意を表す接頭語である。
結句「ますかげはなし」は、まさる陰はないの意で、木陰と庇護の二つの意の「かげ」を重ねて主君をたたえる。
このもかのも:こちら側とあちら側
かげ:木陰の意と、恩恵や庇護の意を掛ける
ます:まさる
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
こよろぎの磯たちならし磯菜摘む めざし濡らすな沖にをれ波
- 次の歌
-
筑波嶺の峰のもみぢ葉落ち積もり 知るも知らぬもなべてかなしも