甲斐が嶺をさやにも見しかけけれなく
横ほり臥せる小夜の中山
- 歌の意味
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甲斐の山々をはっきり見たいものだ。それなのに心なくも横たわって視界をさえぎる小夜の中山よ。
- 鑑賞
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巻第二十 大歌所御歌 1097
詞書「東歌 甲斐歌」
甲斐の山々を見たいのに、小夜の中山が心なく横たわってさえぎっていると、山に恨みごとを言う。故郷の山を見ようとする思いを、山を擬人化して表した素朴な歌である。作者は記されていない。
東歌は、東国の諸国に伝わる風俗歌が宮廷に取り入れられたもので、国ごとに陸奥歌、相模歌、常陸歌、甲斐歌、伊勢歌の順に並ぶ。
初句「甲斐が嶺を」は、甲斐国の山々、特に白根山などを指す。次歌の第千九十八首も「甲斐が嶺を」で始まり、同じ初句をもつ二首が並ぶ。
二句「さやにも見しか」は、はっきりと見たいものだの意で、「しか」は願望を表す。結句の「小夜」と「さや」の音が響き合う。
三句「けけれなく」は、心なくもの意で、「けけれ」は「こころ」の東国方言である。三句は字余りである。
四句「横ほり臥せる」は、横たわって伏しているの意で、山を人のように見る擬人である。
結句「小夜の中山」は、遠江国の峠で、現在の静岡県掛川市にある。体言止めで恨みの対象を名指しして結ぶ。
けけれ:心。東国の方言
よこほる:横たわる
ふす:横になる
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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筑波嶺の峰のもみぢ葉落ち積もり 知るも知らぬもなべてかなしも
- 次の歌
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甲斐が嶺を嶺越し山越し吹く風を 人にもがもや言伝てやらむ