海神の豊旗雲に入日さし
今夜の月夜さやけくありこそ
- 歌の意味
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海の上に大きな旗のようにたなびく雲に、夕日が射している。今夜の月は清らかに明るく照ってほしい。
- 鑑賞
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巻第一 雑歌 15
詞書は前の歌に続き「中大兄の三山の歌 反歌」
海の上に旗のようにたなびく雲に夕日が照り映える壮大な景色を前にして、今夜の月が清らかに照ることを願う歌である。雄大な自然をとらえた叙景の力は、万葉集の中でも特に優れたものとして名高い。左注は、この歌は反歌らしくないが、旧本が反歌として載せているのでそのまま収めたと記している。印南の海辺での作とみられ、船旅の無事を祈る思いもこめられているとされる。結句の訓みには諸説がある。
作者の中大兄皇子は、舒明天皇と皇極天皇(斉明天皇)の皇子で、後の天智天皇である。中臣鎌足とともに蘇我氏を倒して大化の改新を進め、のちに近江大津宮に都を移して即位した。
初句「海神の」は、「海神」が海をつかさどる神の意で、転じて海そのものを指す。大海原を神の領域として示し、雄大な景色を言い起こしている。
二句「豊旗雲に」は、「豊」がほめたたえる接頭語で、大きな旗のようにたなびく雲をいう。旗雲はめでたいしるしの雲ともされた。
三句「入日さし」は、沈もうとする夕日が雲に射しているさまで、連用形で文をいったん区切っている。雲が夕日に染まる色彩の豊かさが感じられる。
四句「今夜の月夜」は、今夜の月の意で、「月夜」は月そのものを指している。夕暮れの景から夜の月へと時間を進めている。
結句「さやけくありこそ」は、「さやけし」がはっきりと明るいの意、「こそ」が願望を表す終助詞で、さやかに照ってほしいの意である。夕日の輝きを受けて、月の清らかな光を願う祈りで結んでいる。結句は字余りとなっている。
わたつみ:海の神。転じて海
はたくも:旗のように横にたなびく雲
いりひ:沈もうとする太陽、夕日
つくよ:月、月の光
- 作者
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中大兄皇子
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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香具山と耳成山と闘ひし時 立ちて見に来し印南国原
- 次の歌
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三輪山をしかも隠すか雲だにも 心あらなも隠さふべしや