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打ち麻を麻続の王海人なれや
伊良虞の島の玉藻刈ります

歌の意味
麻続王は海人なのだろうか。いや海人ではないのに、伊良虞の島の藻を刈っておられる。
鑑賞
巻第一 雑歌 23

詞書「麻続王の伊勢国の伊良虞の島に流さるる時に、人の哀傷して作る歌」
 流罪となって伊良虞の島で暮らす麻続王が、海人のように藻を刈って暮らしていることを、当時の人が哀れんで詠んだ歌である。高貴な王が海辺の漁民と同じ暮らしを強いられる落差を嘆き、同情を寄せている。次歌の第二十四首は麻続王がこれに和した歌とされ、二首で一組となっている。左注は日本書紀を引き、天武天皇四年(675)四月に麻続王が罪により因幡に流されたとあり、伊勢の伊良虞の島とするのは後の人が歌の言葉によって誤って記したものかと疑っている。
 作者は題詞に「時の人」とあるのみで、名は伝わらない。歌に詠まれた麻続王は三位の位にあった皇族で、罪を得て流罪となった人物である。

 初句「打ち麻を」は、打って柔らかくした麻をの意で、麻を紡いで績むことから「麻続」にかかる枕詞である。
 二句「麻続の王」は、流罪となった麻続王を指す。枕詞に続けて名を示し、その身の上に焦点を当てている。
 三句「海人なれや」は、「なれ」が断定の助動詞「なり」の已然形、「や」が反語的な疑問で、海人なのだろうか、いや海人ではないのにの意である。ここで句切れとなっている。
 四句「伊良虞の島の」は、伊勢湾口の島とされ、現在の愛知県の伊良湖岬のあたりにあたる。本巻の第四十二首にも「伊良虞の島辺」が詠まれ、同じ地名を共有している。
 結句「玉藻刈ります」は、「玉」が美称、「ます」が尊敬の補助動詞で、藻を刈っておられるの意である。海人の仕事に敬語を添えることで、高貴な身分との落差を際立たせている。次歌の結句「玉藻刈り食す」と対応している。

うちそ:打って柔らかくした麻
あま:海で漁をしたり藻を刈ったりして暮らす人
たまも:藻の美称
出典
万葉集
前の歌
川の上のゆつ岩群に草生さず 常にもがもな常処女にて
次の歌
うつせみの命を惜しみ波に濡れ 伊良虞の島の玉藻刈り食す